宅録を始めようと機材を探し始めると、最初にぶつかる壁がオーディオインターフェース選びです。マイクは決まった、パソコンもある。あとはこれをつなぐ箱を選ぶだけ、のはずが、種類が多すぎて手が止まってしまう人は少なくありません。ここでは、購入を決めるまでの流れを時系列で追いながら、どこで何を確認すればよいかを整理していきます。
まず「何に使うか」を紙に書き出す
最初にやるべきことは機材の比較ではなく、自分がどんな用途で使うのかを言葉にしておくことです。これを飛ばして製品ページを見比べ始めると、スペック表の数字に振り回されて選べなくなります。
理由は単純で、オーディオインターフェースは用途によって必要な性能がまったく違うからです。歌ってみた動画のためにマイク1本を録音したいだけなら、入力数は1つで十分です。一方でバンドの練習を一発録りしたい、ギターとボーカルを同時に録りたいという場合は、最低でも2入力、できれば予備を含めて4入力くらいあると安心です。
たとえば、弾き語りの弾いた音と歌った声を別々のトラックとして録りたい人が、1入力のモデルを買ってしまうケースがあります。使い始めてから「ミックスで声だけ音量を調整したいのにできない」と気づき、結局買い替えることになります。最初の10分で用途を書き出しておけば、こうした遠回りは避けられます。
ただし、将来的にメンバーを増やしたい、配信もやってみたいという漠然とした希望まで全部盛り込もうとすると、今度は予算オーバーの高機能モデルに引っ張られます。今すぐ必要なことと、いずれやりたいことは分けて考えるくらいがちょうどよいところです。
入出力の数と接続方式を確認する
用途が固まったら、次に見るのは入力端子の数と、パソコンとの接続方式です。ここを曖昧にしたまま価格だけで選ぶと、届いてから「そもそも使えない」という事態になりかねません。
接続方式には主にUSB-AとUSB-Cがあり、パソコン側の端子と合っているかをまず確認します。近年のノートパソコンはUSB-Cのみという機種も増えているため、変換ケーブルが必要になる場合もあります。また、マイク入力にはXLR端子、ギターなどの楽器にはTS/TRS端子が使われるのが一般的で、自分が接続したい機材の端子形状と、インターフェース側の対応状況を照らし合わせる作業が欠かせません。
具体的な場面を挙げると、ダイナミックマイクを使う人がファンタム電源非対応の安価なモデルを選んでしまい、音が異常に小さいまま録音してしまうことがあります。コンデンサーマイクにはファンタム電源が必須ですが、対応の有無は製品によって差があるため、購入前に必ず仕様欄を確認しておく必要があります。
例外として、すでに別のオーディオインターフェースやミキサーを持っていて、それを経由して接続する場合は、この段階の確認が不要になることもあります。また、iPadやスマートフォンでの録音を主体に考えている人は、パソコン用のUSB規格とは別に、Lightning対応やUSB-C対応かどうかを見る必要があり、ここは見落としがちなポイントです。
実機の音や操作感を試せる場所を探す
スペックの比較がひと通り終わったら、可能な範囲で実機に触れてみることをおすすめします。数値だけでは分からない使い勝手の差が、実際には結構あるからです。
ここは迷うところですが、オーディオインターフェースの「音質」は、数字上のスペックだけでは判断しきれない部分があります。同じようなサンプリングレートやビット深度を謳っていても、プリアンプの質やノイズの少なさは製品ごとに個性があります。楽器店の視聴コーナーでヘッドホンをつけて音を聞き比べると、思っていたより差を感じることがあります。
たとえば、大きな家電量販店の楽器コーナーで、同価格帯の2機種を実際に触ってみた人がいたとします。片方はつまみが小さく操作しにくいと感じ、もう片方は入力レベルを示すランプが見やすく、初心者でも扱いやすいと感じた。カタログスペックだけでは分からなかった差が、その場で明確になったわけです。
もっとも、近所に試せる店がない、忙しくて足を運べないという人も多いはずです。その場合は、実際に使っている人のレビュー動画や、操作画面が映っている紹介動画を探して見るのも一つの方法です。文字のレビューよりも、つまみの動きや音の出方が伝わりやすいという利点があります。試せないからといって選ぶこと自体を諦める必要はありません。
価格帯と付属ソフトを比べて絞り込む
ここまでで候補が2〜3機種に絞れているはずです。最後の絞り込みでは、価格そのものだけでなく、付属してくるソフトウェアや保証内容も含めて比較します。
なぜここまで見る必要があるかというと、オーディオインターフェースは本体価格だけで完結しないことが多いからです。録音・編集に使うDAWソフトが付属しているモデルとしていないモデルでは、初期費用に差が出ます。すでに使い慣れたDAWがある人には付属ソフトの有無はあまり関係ありませんが、これから始める人にとっては、無料で使えるソフトが付いてくるかどうかは小さくない違いです。
具体例として、予算を3万円前後に決めていた人が、A機種は本体のみ、B機種はDAWソフトと簡易マイクセットが付属という条件だったとします。単純な本体価格ではAの方が安くても、必要なものを揃えるトータルで考えるとBの方が結果的に出費が少なかった、というのはよくある話です。
ただし、付属ソフトが自分の使いたい機能を持っていない、あるいは英語表記のみで扱いにくいという可能性もあります。付属しているからお得、と単純に判断せず、そのソフトが自分の作業に合っているかまで確認しておくと後悔が少なくなります。保証期間についても、1年保証が標準のメーカーと、登録すれば延長できるメーカーがあり、長く使うつもりなら見ておいて損はありません。
注文してから手元に届くまでの流れ
機種が決まれば、あとは注文して到着を待つだけですが、この段階にもいくつか知っておきたい点があります。届いてすぐに使えるとは限らないという心構えが、余計な焦りを防いでくれます。
通販サイトで注文した場合、在庫があれば数日で届くのが一般的です。届いた箱を開けると、本体、USBケーブル、簡単な説明書、場合によってはソフトウェアのライセンスキーが入った紙が入っています。ここで多くの人がつまずくのが、ドライバーのインストール作業です。パソコンに接続するだけで自動的に使えると思っていたら、メーカーのサイトから専用ドライバーをダウンロードしないと正常に動作しない機種がほとんどです。
たとえば、届いたその日にすぐ録音を始めたいと思っていた人が、ドライバーのインストールに手間取り、結局その日は設定だけで終わってしまうということがあります。マイクをつないでも音が出ない、パソコンが認識しないといったトラブルの多くは、このドライバー未インストールが原因です。届いたらまず公式サイトで最新のドライバーを確認し、指示通りにインストールを済ませておくと、当日から作業に入りやすくなります。
例外として、クラス準拠(ドライバー不要)を謳っているモデルもあり、その場合は接続するだけですぐに音が出ることもあります。ただしクラス準拠のモデルでも、専用の設定ソフトを入れた方が細かい調整がしやすくなることが多いため、動くから終わり、とせずに一度メーカーサイトを覗いておくとよいでしょう。届くまでの数日を使って、接続手順やドライバーの入手先を事前に調べておくと、到着後の作業がぐっとスムーズになります。

